メタバースの未来を切り開く - Meta Osaka代表が語る、Robloxへの期待と展望
- 4月3日
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2024年10月、シードラウンドで1.8億円の資金調達を実現したMeta Osaka。不動産経営のバックグラウンドを持つ代表取締役の毛利英昭氏と、CGアーティストとして第一線で活躍している同社役員の今井翔太氏という、異なる経歴を持つ二人のキーパーソンに話を伺った。
「私は元々、Epic Gamesに10年ほど在籍していました」と語るのは今井氏だ。CG系の大学を卒業後、約20年にわたってゲーム制作やCGの分野で専門家としてのキャリアを積んできた。テクニカルディレクターとしての経験も持ち、メタバースや3D空間の活用について豊富な知見を有している。

一方の毛利氏は「私は全く異業種の人間です」と語る。不動産会社の経営者として実績を重ねてきた毛利氏は、自身を「アナログ人間」と称し、「私のような大人が世の中には多いと思います。そういう人たちに対して、新しい技術や情報を伝えるパイプ役になれたら」と、その立ち位置を表現している。

Meta Osaka設立の背景にある「大阪愛」と危機感
毛利氏は、社名に込められた「Osaka」への思いを語る。26年間にわたり大阪で不動産業を営んできた毛利氏は、大阪をもっと盛り上げたいという地元愛から、本業の傍ら様々なイベントを主催してきた。大阪城の堀を泳ぐトライアスロン大会や、2025年の万博会場となる夢洲での花火大会など、「大阪でおもろいことをしたい」という思いで取り組んできた。
しかし、不動産業界で目の当たりにした海外資本の流入が、新たな危機感を生んだ。「大阪のビルやホテルを外国資本が積極的に購入している状況を見て、このままではバーチャル空間までもが海外に乗っ取られるのではないか」という懸念を抱いた。
この危機感は、株式会社Meta Heroesの松石氏との出会いにより具体的な行動へと結びついた。「このままでは大阪どころか日本がやばい」という松石氏の言葉に背中を押される形で、2023年9月、Meta Osakaが設立された。
設立にあたっては、大阪の観光事業を手がける堀氏も加わり、「メタバースを大阪から、アナログな人たちにを届ける」ということで事業がスタートした。そこに、メタバースの専門家として今井翔太氏を迎え入れることで、現在のMeta Osaka社が誕生した。
メタバース専門家として第一線で活躍し続ける今井氏
同社役員の今井翔太氏は、ニューヨークのスクールオブビジュアルアーツ(SVA)で学んだCGのスペシャリストだ。ピクサーの『トイストーリー』や『スパイダーマン』が話題を集めた時代に、CGの可能性に魅了されたという。
在学中からニューヨークでVFX系やモーショングラフィックス系のテクニカルアーティストとしてキャリアをスタート。特にレイトレーサーやコンポジティング系の技術については、日本でもトップクラスの知見を持つという。
帰国後、アニメや映画、コマーシャルなど様々な分野でCG制作に携わる中で、今井氏は日本特有の課題に気づく。「日本では体系立ててCGを勉強する傾向が弱い。個人として素晴らしい才能を持つ人は多いものの、知識を体系化して学問として学ぼうという姿勢が、アメリカや中国に比べて弱い」と指摘する。
この課題に対応するため、日本のCGIプロダクション向けに勉強会を始めた。HDRIの技術や撮影方法、リニアワークフローなど、専門的な知識の共有に努めた。その活動は次第に広がり、CGツールのエバンジェリストとしての役割も担うようになった。
そのような中、約15年前にNVIDIAのデモを目にし、CPUレンダリングからGPUレンダリングへの転換を予感した今井氏は、Epic Gamesへの転身を決意。同社では、コミュニティマネージャーとしてUnreal Engine 4(UE4)の普及に尽力した。世界各地を飛び回って新しい情報を入れては日本中で講演をしたり、開発者コミュニティを日本各地で立ち上げた。それに加えて、Unreal Engineを用いた事例や技術を紹介するEpic Games Japanの主催イベント「Unreal Fest」の立ち上げにも携わった。
その後、Fortniteの日本展開を任され、コミュニティマネージャーからeスポーツ担当、インフルエンサーマーケティング、ソーシャルメディア、クリエイターリレーションまで、幅広い役割を担当。日本のメタバースやeスポーツシーンの主要人物とのネットワークを築き上げた。
2023年末、Epic Gamesを含む大手ゲーム会社で大規模なレイオフの波が訪れ、今井氏も同社を去ることを決意。そのタイミングで、Meta Heroesの松石社長からの誘いを受け、Meta Osakaへの参画を決めた。Meta Osakaでは、アドバイザーとして同社のプロジェクトに参画しているメンバーを支援している。
「大阪を世界一おもろい街に」 - Meta Osakaのビジョンにかける想い
「大阪を世界一おもろい街にする」というビジョンは、Meta Osaka設立時に明確に打ち出されたものだという。それまでも「大阪を盛り上げたい」という想いで事業を展開してきた毛利氏だが、Meta Osaka設立を機に、より強い意志表明として言語化された。

このビジョンの実現に向けて、同社が最も大切にしている理念は「若者と子どもたちの未来」だ。「『おもろい』というときに、我々大人がおもろいだけでは絶対に良くなくて、子どもたち、若者たちにとっておもろい大阪にならないといけない」と毛利氏は語る。
52歳になる毛利氏は、自身の経験を振り返りながら、現代の若者が抱える課題に言及する。「おかげさまで、自分でおもろいなと思うこと、したいことはたくさんさせて頂きました。しかし、今の若い人たちや子どもたちが、大人になりたい、こんな仕事をしたいと思ってくれていないように感じています。未来や先行きが不安という声をよく聞くんです。」
また、外国人の視点からも現状の課題が見えてくるという。外国人の友人は、「大阪の町はとても面白いが、日本人は面白そうに歩いていない。」と感じているそうだ。「彼らは日本に来たら面白くて楽しくていい国だと言っているのに、日本人自体は日本のことをあまりよく思ってない」というギャップに気づき、「これはやはり生活が面白くないんだろう」という結論に達したという。
この状況を打開するため、毛利氏は若い世代へのアプローチを重視している。「大人を変えるのはなかなか難しいので、子どもにリーチしたい」という想いから、メタバースやeスポーツという新しいプラットフォームに着目した。「子どもたちに興味を持ってもらえて、直接リーチできる」という特性を活かし、クリエイターを目指す子どもたちの夢を応援していく考えだ。
「今までは不動産しかしていなかったですが、メタバースでしたら子どもたちにリーチできます」と語る毛利氏。自身の思いを直接的に実現できる手段として、メタバース事業に大きな期待を寄せている。
メタバースプラットフォームとしてのRobloxの可能性
Meta Osakaは、これまでFortniteを中心にオリジナルマップや企業マップを制作してきたが、今回の資金調達の背景には「Robloxへの注力」がある。今回、なぜRobloxへの注力を決めたのだろうか。
「僕らアナログ世代に届けるには、スマホで使えるか使えないかという点が非常に大きい」と毛利氏は説明する。自治体や役所での商談経験から、メタバースやFortniteという言葉だけでは理解を得られないが、スマートフォンで実際に見せることで即座に反応が変わるという。役所の方や企業の経営陣に対しても、この「身近さ」「アクセスのしやすさ」が重要だと強調する。
今井氏は、「メタバースプラットフォームの成功要素」を指摘する。現在、TikTokやYouTubeに代表される動画クリエイターのエコシステムから、ゲームクリエイターのエコシステムへの移行期にあると分析。その中で、Robloxは理想的な形態とシステムを早期に実現しクリエイターを集めることに成功しつつあると言う。Fortniteがこの状態に到達するには、最低でも5年ほどかかると分析する。
Fortniteの課題として、大手IPの早期導入を挙げる。「大手IPを入れるのは諸刃の剣です。一時的な売り上げは立ちますが、IPのブランド管理が要因となり、様々な規制が発生してしまいます」と指摘。ディズニーや集英社といった大手IPホルダーとの契約関係が、プラットフォームの自由度を制限する原因となっているという。メタバースコミュニティーを盛り上げていくには、個人クリエイターと企業の双方が参加してくれないといけない。現状のFortniteには企業が参入する余地が少ない一方で、Robloxは早い段階から企業がメリットを得られるシステムが作られている点を評価している。
また、Robloxの「プラットフォームビルダー」としての明確な思想も、将来性を見る上で重要な要素だという。Robloxは、あくまでプラットフォームの運営者に徹しており、ほとんど表に出てこないことがそれを証明している。
現在、日本のRobloxは13歳以下のユーザーが中心であるため、YoutubeやXなどでビジネスパーソンや親世代の目に触れにくく、言及されることが少ないのが現状だ。しかし、「確実に日本でもユーザー数が増えていて、経済圏が育ち始めている」と今井氏は考えている。
競合との比較では、Minecraftは創作の幅が狭いため、クリエイターがマネタイズできるほど魅力的なコンテンツを作りにくいことを指摘。それに加え、有料ゲームであることも大きな障害になっているという。Fortniteは依然として「バトルロイヤルゲーム」というイメージが強く、真のCtoCプラットフォームになり切れていないと語る。実際、公開されているデータからも、Fortniteではバトルロイヤルモードが圧倒的な人気を誇っている状況が確認できる。
イベント事業を通じたリアルでの接点 - Meta Osakaの独自性
Meta Osakaの独自性について、毛利氏は2つの大きな強みを挙げた。まず第一に、「リアルに強い」点を強調する。メタバース開発を手掛けながらも、リアルイベントとリアル施設の運営という実体験の場を持っているのだ。
その具体例が、大阪・難波駅前の「なんばパークス」1階に設置された「eスタジアム」だ。ここでは「メタバースサロン」と「スペーシャルスタジオ大阪(SPATIAL STUDIO OSAKA)」を運営。メタバースサロンはMeta Osakaの最新情報やオリジナルマップを動画で紹介するショールームとして機能し、新しいデバイスの展示・体験の場としても活用されている。
「実際に見に来られる、オフラインにリアルの施設があるというところが大きな違い」と毛利氏は説明する。開発したコンテンツを広める場所を持っている点は、他社にない強みだろう。


さらに第二の強みとして、子ども向けのリアルイベントや子どもを集客できるイベントを自社コンテンツとして保有している点を挙げる。実際、同社はインフルエンサーのファンミーティングやゲームクリエイター体験ブース、プロeスポーツチームの抽選会など、多彩なリアルイベントを展開している。この強みを活かし、現在は大阪府下を中心に様々な自治体と包括連携協定を結び、各地でリアルイベントの開催を計画している。特に、「大人も子どもも未来について考える機会を」をコンセプトに、スピーチコンテストや職業体験などを行っている「こども万博」については、多くの自治体から高い関心が寄せられているという。


地域課題の解決という観点では、不登校問題への対応が大きなテーマとなっている。「ほとんどの首長との会話で出てくるのが不登校問題です。不登校の生徒をいかに減らしていくかというのを、どの市長も大きな課題として捉えています。」と毛利氏は語る。その解決策として、eスポーツを活用するアプローチが注目されているという。
また、教育のDX化もテーマに上がることが多いと言う。「DXということで、自治体も何かしないといけないけど、何をしたらいいかがわからない」という声に応え、まずはイベント開催支援から始めている。その後、施設整備などのハード面まで含めてサポートを行うという。
このように自治体や行政との取引も多い同社は、今回の調達資金を使って「ベンチャー企業でありながら、上場企業並みの体制を整えていく」と語る。クリエイターの採用やリアルイベントの開催に加え、社内のガバナンス大勢の構築と社員教育を進めることで、組織としての基盤を強化していく方針だ。
Meta Osakaが予測する日本のRoblox市場の未来展望
日本におけるRobloxの展望として、今井氏は「Robloxの開発者コミュニティの急成長」を挙げる。「前年比で10倍以上になっている感覚がある」とし、明らかな成長傾向が見られるという。また、当初メタバース事業としてFortniteでの展開を検討していた企業の多くが、Robloxへと方向転換を図っている状況も、開発者コミュニティの活性化を示す指標として挙げられる。
特筆すべきは、GeekOutや電通による日本のIPのRobloxにおける展開だ。「Fortniteみたいにプラットフォームのコアに入れてしまうと、クリエイターエコノミーとしては動きが悪くなってしまいます。Robloxは、プラットフォーム全体ではなくワールド単位でIPを導入することで、クリエイターエコノミーとしての印象は変えずに企業プレイヤーを取り込むことに成功している」という。「日本はIPが豊富な国家」という特性を活かし、今後も子どもたちの心を掴むIPがRobloxに続々と参入してくることが期待される。
さらに、現在MinecraftやFortniteなどを配信しているゲームストリーマーが、次に遊ぶゲームとしてRobloxに参入するのではないかという予想も立てている。
現在のゲームストリーマーが最も頻繁に配信しているゲームはグランドセフトオート(GTA)のロールプレイ配信で、配信者同士が役割を演じながらストリーミングするスタイルが人気を博している。次点にはMinecraftが位置し、「レゴのように自由にできる」点がクリエイターの個性を引き出しやすい特徴として人気を集めている。
しかし、ゲームストリーマーは本来、「ゲームの人気に乗っかって爆発的に視聴者を増やす」ことを狙っている。今後、例えばMinecraftでネタが尽きた場合、ストリーマーは類似のプラットフォームへ移行する可能性が高い。Fortniteのクリエイターは右肩下がりの傾向にあるため、今後はRobloxが選ばれるだろうと今井氏は見ている。
新規でのメタバースプラットフォーム参入については、「元々それなりのユーザー母数がないとメタバースとして成立しない」として、ほぼ不可能との見方を示した。実際、日本でも様々な企業がメタバース空間の構築を試みているが、十分なユーザー規模を確保できない困難な状況が続いている。
Robloxの更なる成長に向けた課題として、今井氏はクリエイターの収益性向上を挙げる。「YouTubeやTikTokが流行った理由は、「稼ぎやすさ」だと分析。特に、広告収益が自動的に発生する仕組みと、初期の「1viewで1円稼げる」という好条件が、成長の原動力になったと指摘する。
現在、Robloxのクリエイターは売上の30%しか収益を得られていない状況だ。今後この状況を変える可能性として、Epic GamesによるGoogle、Appleとの訴訟の行方に注目が集まる。今井氏は「2025年の後半から2026年にかけて決着がつく」と予測し、Epic Gamesが勝訴した場合、クリエイターの取り分が60%程度まで上昇する可能性がある。そうなると、クリエイターの収益性が一気に高まり、市場は大きく変わると考えているそうだ。
EUではすでにサイドストア(App StoreやGoogle PlayなどのOS標準ではないアプリストア)が解禁されたこともあり、「2026年からモバイルを使ったデジタルコンテンツのCtoCプラットフォームが劇的に進化する」と今井氏は予想する。このような変革期を見据え、「今のうちRobloxに進出して、ポジションを取っておいた方がよい」と語った。
Robloxをビジネス活用する日本企業に向けたメッセージ
今井氏は、Robloxの次なる革新としてAIとの統合を挙げる。「メタバースのクリエイターエコシステムにおいては、コンテンツが作りやすいかどうかという点が非常に大事」と指摘。その上で、今後2年以内に大きな変革が起こると予測する。
具体的には、生成AIの急速な発展によって、「喋っただけで空間が生まれ、オブジェクトが生成され、コミュニケーション、さらにはローカライズまでしてくれる」ようになり、コンテンツ制作が指数関数的に簡単になっていくという。これはRobloxが重点的に取り組んでいる分野であり、AIとの統合が実現した後では参入のタイミングとして遅いと今井氏は警告する。「生成AI時代が本格的に到来すると、Robloxのワールドを誰でも簡単に作れてしまう。そうなる前に、今のうちからポジションを取っておいた方がいい」というのが、今井氏からのメッセージだ。

一方、毛利氏は「Meta Osakaはメタバースの案内人を目指している」と語る。同社はRobloxの開発を手掛けているものの、それはあくまでも選択肢の一つだという。「Fortniteでもそれ以外でもよい」とし、各企業や自治体にとって最適なプラットフォームを一緒に考えていく姿勢を示す。
「何かあったら何でも相談してください」と毛利氏は呼びかける。既にマップを作成している企業からのプロモーションや、リアルイベントの開催など、同社がサポートできる課題は幅広い。メタバースにおける知見はもちろん、リアルイベントや地域コミュニティまで抱える同社の課題解決力は数段違う。
今回のインタビューを通じて、Meta Osakaが描くメタバースの未来像が明らかになった。AIとの融合という技術的革新を見据えながら、各企業や団体に寄り添った形でのメタバース活用を提案していく。The Roblox Timesとしては、日本のメタバース業界において重要な役割を果たしていくMeta Osakaを継続的に報じていきたいと考えている。


