世界が問い始めた「子どもとSNS」──Robloxが年齢別アカウントで示す安全設計の現在地
- 4月15日
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2025年12月、オーストラリアは世界で初めて16歳未満のソーシャルメディア利用を法的に禁止した。フランスは2026年9月を目標に15歳未満への禁止令を進め、英国でも同様の議論が続く。こうした「子どもとSNS」をめぐる世界規模の問い直しを受け、Robloxは2026年6月、5歳から15歳のユーザーを対象とした年齢別アカウント「Roblox Kids」と「Roblox Select」の導入を発表した。
単なる機能の追加ではなく、プラットフォームとしての安全設計を根底から問い直す動きだ。保護者・クリエイター・日本の読者にとって何がどう変わるのかを、複数の観点から整理する。
16歳未満を「線引き」する国が増えている
オーストラリアが2025年12月に施行した法律は、16歳未満によるFacebook・Instagram・TikTok・Snapchatなどのソーシャルメディア利用を禁止するものだ。違反企業には最大4,950万豪ドル(約34億円)の罰金が科される。TechCrunchが2026年4月時点でまとめたリストによれば、オーストラリアは「2025年末に禁止令を発した最初の国」と位置づけられている。
フランス国民議会は2026年1月、15歳未満への禁止を圧倒的多数で可決。マクロン大統領が2026年9月までの施行を急いでいる。英国では16歳未満の全面禁止案が議論の俎上に載り、米国でもRoblox単体で約80件の未成年者関連訴訟が係争中だ。ゲームプラットフォームであるRobloxは厳密な「ソーシャルメディア」ではないが、1億4,400万人を超える日次アクティブユーザーの多くが未成年であることから、各国規制当局の視線が向けられるのは必然といえる。

▲ ソーシャルメディアを見る10代の若者。オーストラリアが世界初の16歳未満SNS禁止法を施行し、各国が追随しつつある(Photo: Getty Images)
Roblox Kidsアカウント:5〜8歳に届く「最小限の世界」
「Roblox Kids」は5歳から8歳を対象とする新しいアカウント区分だ。アクセスできるコンテンツは「Minimal(最小限)」または「Mild(軽度)」に評価されたゲームのみに限定される。チャット機能はデフォルトで全て無効化され、保護者が明示的に許可した場合のみ有効になる仕組みだ。Roblox公式の発表によれば、アプリ全体に「Kidsアカウントであること」を示す独自の視覚的カラーインジケーターも追加される。
重要なのは、Kidsアカウントの対象ゲームになるためのハードルも大幅に引き上げられた点だ。開発者はID確認・2段階認証の有効化・Roblox Plusへの加入という3条件をすべて満たす必要がある。さらにRoblox側がリアルタイムで16歳以上のユーザー行動やユーザーレポートを監視・評価し、最終的にゲームが選定される3ステップのプロセスが設けられた。「子ども向けコンテンツ」というレッテルを得るために、開発者側にも相応の責任とコストが求められる設計になっている。

▲ Roblox Kidsアカウントの画面イメージ。アプリ全体に独自のカラーインジケーターが表示され、子どもが利用中であることを視覚的に示す
Roblox Select:9〜15歳の「段階的な開放」
「Roblox Select」は9歳から15歳を対象とする区分で、KidsとSelectの間に位置する中間層だ。アクセス可能なコンテンツは「Moderate(中程度)」の評価まで拡張される。コミュニケーション設定は既存の保護者管理設定を継承しつつ、新たに「保護者が子どもと交流しているプレイヤーを確認・管理できる」機能が加わる。Gulf Newsの報道では、顔認識技術(フェイシャルエスティメーション)による年齢確認もこの仕組みを支える柱として機能していると指摘する。
アカウントの移行は自動的に行われる。9歳の誕生日にRoblox Kidsから自動的にSelectへ移行し、16歳になると通常の標準アカウントに切り替わる。保護者の操作なしに段階的に権限が広がっていく設計は、子どもの成長に合わせたコンテンツ体験を実現する一方で、「誕生日を偽れば制限を回避できる」という課題もはらんでいる。

▲ 保護者が子どものRoblox利用を管理するイメージ。Roblox Selectでは保護者ダッシュボードからゲームの承認・ブロックや対話相手の確認が可能になる
顔認証から年齢別アカウントへ:Robloxの安全戦略の変遷
今回の年齢別アカウント導入は、突然の方針転換ではない。Robloxはオーストラリア・ニュージーランド・オランダからの法的要請を受け、2025年12月からチャット利用の前提条件として顔認証による年齢確認を義務化。2026年1月には全世界での適用に拡大した。
ただし、顔認証システムには精度の課題が残った。成人を子どもと判定したり、子どもを大人と誤認識するケースが報告されたほか、保護者が子どもの代わりに顔認証を完了するというルール違反も問題になった。「年齢別アカウント」という設計は、認証精度に依存するのではなく、アカウント作成時点から年齢に応じた制限を構造的に組み込むという、より根本的なアプローチへの転換と見ることができる。こうした安全対策の強化は80件を超える米国訴訟への対応という側面も持つが、Robloxが発表した3月のセーフティスナップショットでは、マルチモーダルAIが1日5,000件以上の違反を検出するという実績も示されている。

▲ Robloxの年齢確認と安全設計の進化。顔認証義務化(2025年12月)を経て、6月には構造的な年齢別アカウント区分へ移行する
保護者・クリエイター・日本の読者への示唆
まず保護者にとっての変化から整理する。6月のロールアウト後、15歳以下の既存ユーザーは自動的に年齢に応じたKidsまたはSelectに移行する。保護者は子どものアクティビティ監視・ゲームの承認/ブロック・チャット管理を行える専用ダッシュボードを通じて、従来より細かいコントロールが可能になる。特にRoblox Kidsでは「チャットは保護者が許可するまでオフ」というデフォルト設定は保護者にとって心強い変化だ。
クリエイターへの影響も無視できない。Kidsアカウント対象ゲームに選定されるためには、Roblox Plusへの加入とID確認が必須になる。4月に別途発表された「全年齢公開にもRoblox Plusが必要」という要件変更と合わせると、クリエイターとして活動するために課金が不可欠な方向性が明確になってきている。より安全な環境を作るためのコストを、プラットフォームと開発者が共同で負担するという構造の転換だ。
日本での導入時期は現時点で明示されていないが、グローバルロールアウトが6月初旬に予定されていることから、日本も対象に含まれる可能性が高い。Robloxを使う子どもを持つ日本の保護者は、今から保護者コントロールの設定を確認し、子どものアカウントがどの区分に移行するかを把握しておくことが、6月以降に慌てないための準備になるだろう。


