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ボストン科学博物館が制作した、Robloxを活用した教育ゲーム「Mission: Mars」 - エンジニアリングと科学を楽しく学べる

  • 2024年9月20日
  • 読了時間: 7分

ボストン科学博物館

Robloxは、サンドボックス型ゲームプラットフォームとして注目を集めていますが、その活用範囲は教育分野にまで及んでいます。特に、博物館や教育機関が、Robloxを活用した学習体験を提供し始めています。


その代表例として、ボストン科学博物館が挙げられます。同博物館は、ゲーム開発スタジオのフィラメント・ゲームズと提携し、3D仮想空間を活用した教育ゲーム「Mission: Mars」を開発しました。このプロジェクトは、Roblox Community Fund(RCF)という教育支援を目的とした公益財団法人から1,000万ドルの助成金を受けて実現しました。


Robloxが教育に適している理由は、その開発環境にあります。Roblox Studioという無料のツールを使用することで、プログラミング初心者でも容易にゲーム開発や仮想空間の作成が可能です。また、Lua言語を用いた基本的なプログラミングから高度なスキルまで幅広く学べる点も特徴です。Robloxは単なるプログラミング学習にとどまりません。英語での操作が必要なため、自然と英語力が身につきます。また、プラットフォーム内でのアイテム販売を通じて、ビジネスやマーケティングスキルも学ぶことができます。


教育分野での活用を促進するため、Robloxは「Roblox Education」というプログラムを提供しています。このプログラムを通じて、教育者や学生がコーディングやデジタルシチズンシップについて学ぶことができます。

日本国内でも、Robloxを活用した教育の取り組みが始まっています。エデュケーショナル・デザイン株式会社やルネサンス高校グループなどが、プログラミング教育にRobloxを導入し、楽しみながら学べる環境を提供しています。


ボストン科学博物館が開発した「Mission: Mars」は、次世代科学スタンダード(NGSS)に準拠しており、学校や個人に無料で提供されています。NGSSは、米国の教育基準の一つで、幼稚園から高校卒業までの科学教育とエンジニアリング教育に焦点を当てています。


Mission Mars とは

Mission: Mars

「Mission: Mars」は、プレイヤーが火星探査員となり、未知の世界を冒険しながら科学的思考や問題解決能力を養うことができる学習用ゲームです。


このゲームでは、プレイヤーは火星の過酷な環境の中、様々なミッションに挑戦します。主な目的は、火星の地形を探索し、水氷などの重要資源を発見することです。ゲームを進めるにつれて、バッジや報酬を獲得することができます。ゲーム内のミッションは多岐にわたります。資源探索ミッションでは特定の資源を収集し、地形探査ミッションでは新たな領域を発見してデータを集めます。また、技術開発ミッションでは新しい装備や技術の開発に取り組み、探査車の性能向上を図ります。

「Mission: Mars」の特徴の一つは、プレイヤーが火星探査車をカスタマイズできる点です。探査車の性能やデザインを自由に改造することで、効率的にミッションを遂行することができるようになります。これにより、プレイヤーは創造性を発揮しながら、工学的な思考を養うこともできます。


このゲームは学校での授業だけでなく、自主学習や娯楽としても活用できる柔軟性を持っています。2022年9月7日のリリース以来、既に440万人以上が利用しており、その教育的効果と人気の高さがうかがえます。


Mission Marsを使った授業の進め方


「Mission: Mars」の教育者向けガイドは、ゲームを授業で効果的に活用するための指針を示しています。「Prep Lesson」というパートでは、「Mission: Mars」をプレイする前の対面指導に焦点を当てています。


この授業の核心は、エンジニアの実際の仕事プロセスを模倣することにあります。生徒たちは、与えられた条件下で問題解決のアイデアを考案し、それを実践し、評価するという一連の流れを体験します。さらに、テスト結果に基づいて設計を改良することで、エンジニアリング設計のサイクルを理解し説明できるようになることを目指しています。


授業の主要な活動として、「火星の灯台ミッション」が設定されています。このミッションでは、以下のステップで進行します:

1. 教師が小さな光源を提示し、生徒たちの作る灯台がこの光を5秒間支える必要があることを説明します。

2. 各グループに材料キットと指示書を配布し、10分間で灯台を制作する課題を与えます。

3. 制作時間終了後、各グループが自分たちの灯台を発表します。

4. 各灯台が、実際に5秒間光を支持できるかテストします。


1回目のトライが終わった後、生徒たちは2回目の灯台作りに取り掛かります。ただし、2回目には以下のような変更点があります:

  • 最初の5分間は計画のみに充て、材料に触れることはできません。

  • その後の5分間で改良された灯台を制作します。

  • 1回目の経験を活かして設計を改善することが求められます。


授業の最後には、各設計の成功や失敗の理由を分析し、チームワークの重要性について議論します。そして、エンジニアリング設計のプロセス全体を振り返ることで、学習内容の定着を図ります。


この授業には、以下のような教育的ポイントがあります:

1. エンジニアリング問題の構成要素(設計課題、基準、制約)についての理解

2. 同じ材料でも異なる設計が生まれることを認識

3. 失敗から学び、設計を改善することの重要性を体験

4. エンジニアリング設計の「計画、制作、テスト、改善」という流れを実践的に学習



Prep Lessonで使用するワークシート
Prep Lessonで使用するワークシート

In-game Lessonは、「Mission: Mars」をプレイすることによる実践的な授業方式です。この方式では、生徒たちはゲーム内で実際にミッションに取り組みながら、エンジニアリングのプロセスを体験的に学びます。


授業の流れは以下のようになります:

1. 準備段階:

   - 各グループにクラフティングマニュアル(作成手順書)とミッション概要(任務要約表)を1部ずつ配布します。

   - 生徒たちは10分間でこれらの資料を確認し、ミッションログ(任務記録表)の1ページ目と2ページ目を完成させます。

   - 教師は、ゲームにログインする前に各グループの計画を確認します。

2. ゲームプレイ:

   - 生徒たちはゲームにログインし、最初のミッションに取り組みます。

   - ミッションの制限時間は15分ですが、必要に応じて延長することもあります。

3. 振り返りと改善:

   - 最初のミッション終了後、ゲーム内のフィードバックを確認します。

   - ミッションログの3ページ目と4ページ目を記入し、車両設計の改善方法を計画します。

4. セッション終了:

   - セッション終了の5〜10分前にゲームを終了します。

   - 全体で振り返りを行い、学んだことや気づきを共有します。


この授業方式の特徴は、ゲームを通じて実際のエンジニアリングプロセスを体験できる点です。生徒たちは計画立案、実行、フィードバック分析、改善という一連の流れを実践的に学びます。また、ゲーム内のチャレンジに直面することで、問題解決能力や創造的思考力を養うことができます。

さらに、ミッションログの記入を通じて、自分たちの思考プロセスや決定の理由を言語化する機会を得られます。これは、メタ認知能力の向上にもつながります。


In-game Lessonは、Prep Lessonで学んだ基礎知識を実践に移す場として機能し、生徒たちの理解をより深めることができます。



生徒に配布するクラフティングマニュアル
生徒に配布するクラフティングマニュアル

Ramp Rescueミッション

ゲーム内ミッションには様々なものがありますが、今回はその一例として、Ramp Rescueミッションについて紹介します。

このミッションでは、プレイヤーは探査車を使って広大な峡谷を安全に越える必要があります。ここで求められるのは、モーター、バッテリー、車輪、ランプなどの部品を適切に組み合わせ、十分な速度で峡谷を飛び越えられる車両を設計する能力です。さらに、峡谷を越えた後は修理キットと酸素を研究室まで運搬するという、資源管理のスキルも試されます。

Ramp Rescue

「Mission: Mars」の教育的価値は、単なる知識の習得にとどまりません。このゲームを通じて、プレイヤーは問題解決能力を実践的に学びます。与えられた条件下でアイデアを創出し、それをテストし、評価するというプロセスは、論理的思考力と創造力を養う絶好の機会となります。


また、このゲームは計画立案から設計、テスト、改善という一連のエンジニアリングプロセスを体験できる点も特徴です。速度、重力、エネルギー管理といった物理的概念を実際の車両設計に応用することで、教室で学んだ理論を実践に結びつけることができます。


さらに、チームでの協力が求められる課題を通じて、チームワークやコミュニケーション能力の向上も期待できます。ゲーム内のフィードバックを基に設計を改善する過程では、試行錯誤を重ねながら失敗や成功から学ぶ姿勢も身につきます。

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