3日で作って世界記録。Grow a GardenとSteal a Brainrotが証明したRobloxヒットの条件
- 5月21日
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▲ Grow a Gardenのゲーム画面。プレイヤーは農地に種を植え、作物を育てて収穫する
2025年から2026年にかけて、Roblox上の2本のゲームが相次いでビデオゲーム史上最高の同時接続記録を更新し続けた。1本は16歳の開発者が3日で作った農場ゲーム、もう1本はイタリア発のインターネットミームをキャラクター化した盗み合いゲームだ。Grow a GardenとSteal a Brainrot。どちらも高品質なグラフィクスとは無縁で、複雑なストーリーラインも持たない。それでも両タイトルは2,500万人超の同時接続を記録し、Fortnite・PUBG・Steamを含む全ゲーム史の壁を超えた。この2本がどこまで伸びたのか、そしてなぜそこまで人を引きつけたのか。数字と設計思想を横断的に分析する。
Grow a Garden:16歳が3日で開発し、Fortniteの記録を抜いた
BMWLuxというユーザー名で活動する当時16歳の開発者が、初期バージョンをわずか3日で完成させた。2025年3月26日にRobloxで公開されたGrow a Gardenは、リリースから33日で10億回訪問を達成し、これはRoblox史上最速の記録だった。ゲームの内容はシンプルで、プレイヤーは農地に種を植え、収穫した作物を換金してより希少な種を購入していく。オフライン中も作物が成長し続けるため、スマートフォンのアプリと同様の「離れにくさ」がある。Jandel(Splitting Point Studios)はゲーム公開から間もなく50%の持ち分を購入し、フロリダ州のRoblox専業スタジオDoBig Studiosも後に少数株主として参加した。
転換点は2025年6月14日の「Working Bees」アップデートだった。リリース直後に同時接続者数(CCU)が1,600万人を超え、当時のビデオゲーム史上最高記録だったFortniteの1,530万人(2020年12月)を初めて上回った。ニューヨーク・タイムズをはじめ欧米の主要メディアが一斉に報じた。その後も6月21日のサマーアップデートで2,130万CCU、8月23日には2,230万CCUを記録した。
経済的インパクトも大きかった。JPモルガンの試算によれば、リリース後3か月間で約1億5,000万ドル(約230億円)のbookingsを生み出し、2025年5月単月だけで1,200万ドルの収益を上げた。7月19日時点でRobloxの「Top Earners」チャート1位を占めていた。35.3億回という訪問数は2026年5月時点も更新中だ。

▲ Grow a Gardenをプレイする様子。16歳の開発者が3日で作ったゲームが世界記録を更新した(AP通信)
Steal a Brainrot:ミームキャラクターの盗み合いが2,540万CCUを記録
2025年5月16日、Roblox上でまた別の実験が始まった。SpyderSammyが開発したSteal a Brainrotは、当時インターネット上で急拡散していた「イタリアン・ブレインロット」ミームキャラクターを題材にしたゲームだ。プレイヤーはコンベアベルトからキャラクターを購入し、他のプレイヤーのキャラクターを盗んで資産を増やしていく。盗まれた子どもが画面の前で泣きじゃくる映像がTikTokやYouTubeで拡散し、ゲームの外からもプレイヤーを呼び込む循環が生まれた。Polygonはゲームのpay-to-winな側面を批判しつつも、「何百万人もの子どもたちを崩壊させている」と表現した。
CCUの成長は後半に加速した。2025年9月13日の「Extinct Event」で2,400万人を記録し、Grow a Gardenの当時の記録を超えた。同年10月には2,540万CCUを達成し、現在もRoblox史上最高の同時接続記録として残っている。PocketGamer.bizは「25M CCUを超えた初のゲーム」として大々的に報じた。
2026年1月には仮想空間内でBruno Marsがライブパフォーマンスを行い、1,280万CCUを記録しながら1,000万人がライブストリームを視聴した。GamesIndustry.bizによればこのイベントでBruno Marsのニューアルバム「The Romantic」収録曲「I Just Might」が事実上の初披露となり、5,400万個のブレインロットアイテムが発行された。2025年のRoblox Innovation Awardsでは「Best Creative Direction」を受賞している。

▲ Steal a Brainrotのゲーム画面。イタリアン・ブレインロットミームのキャラクターが並ぶ(PocketGamer)
「管理者戦争」の夜、Robloxがゲーム産業の地図を塗り替えた
2025年8月23日、最も劇的な数字が出た。GardenのJandelとBrainrotのSpyderSammyが模擬対戦イベント「管理者戦争」を企画し、両ゲームのプレイヤーが一斉に流入した結果、Robloxプラットフォーム全体の同時接続者数が4,740万人に達した。これはSteamの全ゲーム合算の同時接続数を上回るレベルだった。IGNは「Steamと全Fortniteを合算した規模をRobloxが2本のゲームで超えた」と報じた。
この時期のRoblox株価は6月だけで21%上昇し、Q2 2025の決算では日次アクティブユーザー数が1億1,180万人(前年同期比41%増)に達した。これを受けて通期bookings見通しは53億ドル台から60億ドル台へと上方修正された。その勢いは2026年Q1にも続き、日次アクティブユーザーは1億3,200万人(前年同期比35%増)、売上高は14億ドル(同39%増)、bookingsは17億ドル(同43%増)を記録した。Roblox Q1 2026 株主レターはこの成長をGrow a GardenとSteal a Brainrotを含む「コンテンツの多様化」に帰している。

▲ 2025年8月23日の「管理者戦争」イベント当日、Roblox全体のCCUが4,740万人に達した(IGN)
2タイトルを横断する設計の共通項
両ゲームには際立った共通点がある。まず「超シンプルなゲームループ」だ。農場なら「植える・待つ・収穫する」、ブレインロットなら「買う・盗む・守る」という3動詞に集約される。プレイヤーが覚えるべきことが少なく、初回起動から5分で本質的な遊びに入れる設計になっている。Kotakuは「プロトタイプにしか見えない」と評したが、そのシンプルさこそが世界記録の土台だった。
次に「週次イベントによる接続スパイク」だ。どちらのゲームも、新アップデートや季節イベントに合わせてCCUが急騰するパターンを繰り返している。希少アイテムがそのイベント期間中しか手に入らないという「その場にいなければ損をする」設計が、定期的な大量同時接続を生む。Grow a Gardenはこのために専属イベント開発チームを2チーム新設し、Steal a BrainrotはTravis Kelce(NFL)やBruno Mars(音楽)と著名人コラボに踏み込んだ。
3つ目は「バイラル素材になりやすい感情設計」だ。ブレインロットは他者のキャラクターを盗める設計であるため、「盗まれた子が泣く映像」という視聴者にとって強烈な素材が自然発生する。Grow a Gardenにも希少種が他者に奪われる仕様があり、感情的反応がソーシャルコンテンツとして再生産される循環がある。このメカニズムがTikTokやYouTubeでのオーガニック拡散を大量に生み出した。さらに両タイトルともStory Kitchenによる映画化が進行中であり、ゲームの枠を超えたIPへの転換も視野に入っている。

▲ Steal a Brainrotの大型イベント時のCCUピーク。週次イベントが定期的な接続スパイクを生む(Beebom)
日本のクリエイターと企業が今すぐ読み取れること
今回の2タイトルに共通するのは「日本から出てくる可能性が十分にある設計」だという点だ。BloxWireでも取り上げてきたブルーロックやスクイドゲームのIPコラボが証明したように、日本のコンテンツはRoblox上のプレイヤーに強い訴求力を持つ。そこにGrow a GardenとSteal a Brainrotが証明した「超シンプルなループ」「週次限定イベント」「感情的バイラル素材」の3要素を組み合わせれば、日本のクリエイターが世界的なリーチを得る現実的なルートが見えてくる。Roblox公式の開発者フォーラムによれば、2026年5月19日から16歳未満ユーザー向けゲーム公開の要件が厳格化された。ゲームを「公開する」ハードルは上がったが、「バイラルに届く」設計の本質は変わっていない。
3日で作ったゲームが230億円を稼いだという事実は、製作規模の小ささが参入障壁にならないことを示している。Roblox Studioを使えば、個人や小規模チームでも同様の設計を試せる環境は整っている。ブランドや企業側の視点でも、年間1,800億時間(2026年Q1換算)のエンゲージメントを生むプラットフォームが自社のIPとどう組み合わせられるかを検討する価値は増している。Grow a GardenとSteal a Brainrotが見せた世界記録は、Roblox上の次のヒットが今まさに誰かの手の中にある可能性を示すものでもある。


