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競争入札でハリウッドが争奪した——99 Nights in the ForestとDOORSが証明する、RobloxがIPファクトリーになった理由

  • 22 時間前
  • 読了時間: 7分

2026年4月13日、ある映画化権の争奪戦がハリウッドで静かに注目を集めた。20th Century Studios(ディズニー傘下)が競争入札の末に映画化権を取得したのは、わずか1年前まで世界にほとんど知られていなかったゲームだった。ニュージーランドの3人組クリエイターが作り上げたRobloxゲーム「99 Nights in the Forest」は、公開から1年足らずでRoblox全歴代プレイ数7位(累計訪問数260億回)に達し、ゲーム業界でも珍しい速度でその名を広めた。ゲーム産業では長らく「映画原作になれるのは大手スタジオの有名タイトルだけ」という常識があった。しかしRobloxは、その前提を静かに書き換えている。


2025年10月にはRobloxのホラーゲーム「DOORS」がすでに劇場映画として公開されており、RobloxはIPの消費者ではなく、IPの供給者として新たな役割を担い始めている。Roblox上で生まれたゲームがハリウッドの入札合戦を引き起こす時代——その構造と日本クリエイターへの示唆を、2つの事例から読み解く。



99 Nights in the Forest——公開1年で歴代7位、ディズニーが競争入札で勝ち取ったゲーム


Grandma's Favourite Gamesが2025年5月にリリースした「99 Nights in the Forest」は、幽霊が出現する森の中で99夜生き延び、行方不明の4人の子どもを救出するサバイバルホラーゲームだ。

ゲームの実績は驚異的だ。累計260億回という訪問数はRoblox歴代7位に相当し、最大同時接続プレイヤー数は1,420万人(歴代3位)に達する。2026年5月時点でも30万人を超える同時接続プレイヤーが常駐しており、90.6%という高いプレイヤー評価を保ち続けている。Roblox全体のDAUが1億4,400万人を超える中でも、このゲームはトップ10内に位置し続けている。

映画化権の取得を巡っては複数のスタジオが入札に参加した。Deadlineの報道によれば、Michelle KammeがDeal-closerとして20th Century Studiosを代表し競争入札を制した。開発チームのAlec Kieft、Matthew Hufton、Cameron Anglandの3人がエグゼクティブプロデューサーに就任し、ライター・監督はまだ未定の段階で交渉がまとまった。20th Century Studios社長のDavid Greenbaum氏は「世界観に映画的な広がりを持つ大胆なクリエイター」と評価し、世界中の観客に届けることへの意欲を示した。3人の開発者は「ディズニーと20世紀スタジオの映画は子どもの頃の大切な記憶。新しい媒体でスクリーンを震わせる恐怖を生み出せることが楽しみ」とコメントした。

▲ 99 Nights in the ForestのRoblox公式ロゴ。ニュージーランドの3人チームが開発し、公開1年未満でRoblox全歴代7位に達した



DOORSが先行して開いた「Roblox→映画」の道


99 Nights in the Forestの映画化は、突然の出来事ではない。先行事例として、Robloxホラーの先駆者「DOORS」がすでに映画化されている。Moviefoneのデータベースによれば、Pabulum Picturesが制作したDOORS(2025年作品)は2025年10月21日にPG-13指定で劇場公開された。監督はDaniel Allen、製作予算は900万ドルだった。

ゲームのDOORSはRoblox上で50億回以上の訪問数を誇る超人気タイトルだ。100部屋からなるプロシージャル生成のホテルを舞台に、モンスターから逃げ続けるという設計がプレイヤーを魅了する。特筆すべきはエンティティ(モンスター)の行動設計の精緻さだ。「Rush」は2秒で直撃してくる高速型、「Screech」は接触型で視線を当てることがカウンター、「Ambush」は一度通り過ぎた後に引き返してくる——この多様なパターン設計は業界内でも研究対象になるほど質が高く、DOORSはRobloxホラーのベンチマークとして長く君臨している。映画版はゲームの世界観をスクリーンに持ち込み、既存のファンベースを活用した公開を実現した。

DOORSの映画化が示したのは、「Roblox発のゲームが劇場映画というフォーマットを獲得できる」という実績だ。その実績があったからこそ、99 Nights in the Forestに対する複数スタジオの入札競争が生まれた。Roblox発IPの映画化は、偶然の産物ではなく、一定の再現性を持つトレンドになりつつある。

▲ 2025年10月公開のRoblox「DOORS」映画化作品。Robloxゲームの実写映画化第一号として劇場公開された



なぜRobloxゲームは映画化されやすいのか——3つの構造的要因


Robloxゲームが映画化に適している理由は3つの構造的要因に整理できる。

第一は「既存のコミュニティとファンベースの規模」だ。99 Nights in the Forestの場合、Grandma's Favourite Gamesの開発コミュニティだけで1,000万人以上を擁し、映画公開前から巨大なファンベースが形成されている。スタジオにとってこれはマーケティングコストを大幅に削減できる資産であり、IPの「認知度ゼロからのスタート」というリスクを回避できる。Roblox上で数十億回の訪問数を持つタイトルは、すでに映画のターゲット層に浸透しているとみなせる。

第二は「世界観の完結性とドラマ転換のしやすさ」だ。99 Nights in the Forestの場合、「夜になると脅威が来て、昼は資源を集めて準備し、99日間耐え続ける」という骨格は、そのままドラマ的な緊張構造に転用できる。生存という明確な目標、夜ごとに変化する脅威の質、失われた子どもを探すというナラティブ——これらはゲームとしても映画としても機能する普遍的な構造だ。DOORSの「ホテルの部屋を100個クリアする」という構造も同様に、映画のシーン展開に直接対応できる。

第三は「Gen Z・Gen Alphaとの直接接続」だ。Robloxの日次アクティブユーザー(DAU)は1億4,400万人を超え、その多くがZ世代・アルファ世代だ。ハリウッドが若年層向け映画を企画するとき、Roblox発のIPはすでにそのオーディエンスと感情的なつながりを持っている。従来のゲーム原作映画が「ゲームファン以外にも届けるにはどうするか」という課題を常に抱えてきたのに対し、Roblox発IPは「プラットフォームの日常的なユーザー全員」を潜在的な映画観客として持っている点が異なる。

▲ 99 Nights in the Forestのゲームプレイ。夜になると「The Deer」や「カルト信者」が出現し、昼間に資源を集め99日生き延びる構造がドラマ化に適している



Robloxホラージャンルの成熟——DOORSを起点とした品質の進化


DOORSと99 Nights in the Forestの映画化が現実になった背景には、Robloxホラーゲーム全体の品質向上がある。かつてRobloxのホラーゲームといえば低コストのジャンプスケアゲームが大半を占めていたが、DOORSが2022年にエンティティ設計の精緻さで業界の評価を塗り替えて以来、ホラーというジャンルはRoblox上で最も質が向上したカテゴリのひとつになった。

DOORSがエンティティ設計の新標準を示した後、「The Mimic」は日本の民間伝承を題材にした章構造のストーリーホラーへと進化した。同作では「ゲーム上のロアが単なる装飾ではなく世界観に根ざしている」という評価を獲得し、音響設計と物語の深さでRobloxホラーの新境地を開いた。「Pressure」は水没した水中施設を舞台に、酸素メーターという時間的プレッシャーを加え、DOORSの次世代版とも呼べる進化を見せた。lootbar.ggの分析記事によれば「DOORSはエンティティ設計でRobloxが何ができるかを証明し、99 Nights in the Forestはメカニクスが機能すればジャンルが30万人同時接続まで成長できることを証明した」と評されている。

このジャンルの成熟は、映画スタジオが「Robloxゲームは映画化に足る品質を持つ」と判断するための下地になっている。DOORSの映画化が実現したとき、業界内の評価は「Robloxにはまだそこまで達したゲームがない」から「次はどのゲームが映画になるか」へと変わった。99 Nights in the Forestはその流れの中で最も速くハリウッドの目に留まったタイトルということになる。

▲ Roblox「DOORS」のゲーム画面。100部屋からなるプロシージャル生成のホテルで、各モンスターの異なる行動パターンを学びながら生き延びる設計がホラーゲームの新標準を作った



日本クリエイターへの示唆——The Mimicが示す「日本文化×ホラー」の可能性


この映画化トレンドが日本のクリエイターにとって意味することを3点で整理したい。

第一に、「日本の民間伝承・ホラー文化」はRobloxゲームのテーマとして国際的に通用する余地がある。The Mimicが証明したように、日本の妖怪・怪談・祟りといった文化的素材は、ストーリーホラーの世界観として十分な強度を持つ。欧米市場でも和風ホラーの輸出例は映画・ゲームの両面で多く、Roblox上での和風ホラーはまだ十分に開拓されていない領域だ。Roblox上の415%増という日本クリエイター数の成長(2022年〜2024年比)を踏まえれば、今こそその参入タイミングといえる。

第二に、「Roblox上での実績が映画・コンテンツIPへの入り口になる」という可能性を真剣に考える時期に来ている。Grandma's Favourite Gamesの3人はニュージーランドという決してゲーム産業の中心ではない地域から、20th Century Studios(ディズニー傘下)との契約を勝ち取った。地理的な制約がなく、プラットフォーム上の数字だけが評価基準になるRobloxは、日本の独立クリエイターにも同じ可能性を開いている。

第三に、Robloxのクリエイター支援プログラム(IncubatorやJumpstart)は今まさに通常の「趣味ゲーム」ではなく映画的な世界観・物語・体験を持つ新しいジャンルを求めている。ホラー、物語型、文化的題材——これらはRoblox公式の「Novel Games(斬新なゲーム)」区分に合致しており、採択されやすいカテゴリだ。DOORSと99 Nights in the Forestが証明した道筋を、次に歩む可能性は日本クリエイターにも十分に開かれている。

▲ 日本の民間伝承をテーマにしたRobloxゲーム「The Mimic」。物語・音響・世界観の三位一体でRobloxホラーの新境地を開いており、日本文化IPのポテンシャルを示している


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