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PAYDAYが2作目、Sonicは13億回——ゲーム会社がRobloxに『2つ目のスタジオ』を持ち始めた構造の話

  • 5月1日
  • 読了時間: 6分

▲ Starbreeze×Gamefamが発表したPAYDAY第2作のキービジュアル。既存大ヒットIPがRobloxに2作目を持つ転換点を象徴する一枚。


PAYDAYシリーズの開発元Starbreezeが2026年4月29日、Robloxでの第2作開発をGamefamと共同で進めると発表した。1作目「Notoriety: A PAYDAY® Experience」は累計4億回プレイ・承認率92%という規模に達しており、その上で第2作という判断は、Robloxを『副次的な市場』から『主力チャネルのひとつ』に格上げしたことを意味する。


同じ動きはSonic、Stranger Things、Squid Game、ブルーロックなど無数のIPで起きている。背景にあるのは、Robloxの18〜34歳ユーザー数が前年比50%超で伸び、ARPUも従来層比で約40%高いという経営構造の変化だ。本記事では3つの代表事例から、いま大手ゲーム会社がRobloxに『2つ目のスタジオ』を構える理由を読み解く。



事例①:Starbreeze——PAYDAYが『2作目』に進む経営判断


Notorietyは元々、Moonstone Gamesが2014年から運営していたPAYDAYインスパイア系のRoblox作品だ。2024年12月、StarbreezeとMoonstone Gamesがライセンス契約を結び、公式PAYDAY作品として再ローンチされた。創作上のコントロールはMoonstone側に残しつつ、PAYDAYブランドの素材とコンテンツを使えるという、独立スタジオを尊重する形のディール設計だった。


再ローンチ後の数字が業界の注意を引いた。累計4億回プレイ・92%承認率という指標は、苦戦を続けているPAYDAY 3とは対照的に映る。本家タイトルの再生数を1つのRoblox作品が大きく上回るという逆転現象が、PC GamerGame Developerで報じられた。Starbreezeは2026年4月のリリースで第2作をGamefamに発注し、Notorietyとは異なる切り口の体験を作ると説明している。


興味深いのは、これがStarbreezeにとって『PAYDAY 3の救済策』ではなく『収益チャネルの並列化』として位置付けられている点だ。同社は2026年内のローンチを予告しており、Notorietyとカニバリゼーションさせるのではなく、別ジャンル・別ターゲットの第2エントリーとして扱う。AAA中心の従来モデルでは考えにくかった『同一フランチャイズで複数のRobloxスタジオを並走させる』という発想が、ゲーム会社の経営アジェンダに入ってきたことを示す事例だ。

▲ NotorietyのPAYDAYブランド化で公開されたキービジュアル。Roblox上で4億回再生・92%承認率という成功が次の投資を呼んだ。



事例②:SEGA × Sonic——ブランドIPで初の『13億回』が証明した経済規模


Gamefamが2022年4月にSEGAと共同で出した『Sonic Speed Simulator』は、2024年にRoblox史上初の『ライセンスIPで10億回到達』を記録した。GamesBeatの取材では、Gamefamの戦略は『定期的な新エリア投入とイベント運営』『Sonic Primeなどクロスメディアと連動した季節キャンペーン』『AvatarアイテムでのRobloxエコノミー組込』という3点に集約されている。


数字はその後も伸び続け、Pocket Gamerによれば2025年10月時点で累計1億3,000万を超える13億回に到達。Roblox上で10億回を超えた約110タイトルのうち、ブランドIPはSonic Speed Simulator1本だけという特異な位置を占めている。SEGA側にとっては、Sonic PrimeのNetflix視聴増やKnucklesのParamount+での話題化という他メディアへの波及も観測されており、ゲーム単体の指標を超えてIP全体のマーケティングROIに乗っている。


Gamefam自身も拡大を続けている。同社は50タイトル超を運営し、累計370億回・1日平均1,600万セッションという規模に達した。Sonicの成功は、Gamefamを『単なる外部スタジオ』から『大手IPホルダーが第一に頼る公式パートナー』へ押し上げた。Starbreezeが今回PAYDAY第2作の発注先にGamefamを選んだ背景には、まさにこの成功の前例がある。

▲ Sonic Speed Simulatorが達成した10億回到達を記念したGamefamの告知ビジュアル。Roblox史上初のブランドIP10億回ゲーム。



事例③:Netflix・Lionsgate・講談社——『箱』としての公式IPプラットフォーム


もう一つの構造変化は、Robloxが2025年7月に発表したLicense Managerプラットフォームだ。Netflix・Lionsgate・SEGA・講談社が初期パートナーとして参加し、Stranger Things、Squid Game、Saw、Twilight、Like a Dragon、ブルーロックなど7つのIPを公式ライセンス枠で開放した。


仕組みの本質は『中間コストの削減』だ。これまでロイヤリティ交渉に半年〜1年かかっていたIP使用許諾が、Robloxの管理画面上で対応IPを選ぶだけで開発に入れる。Deadlineによれば、たとえばNetflixはStranger Things・Squid Game利用に対してRobux収益の15%を分配する固定スキームを敷いており、開発者にとって参入障壁が大きく下がった。


Varietyはこの動きを『Hollywood-Roblox連携の本格化』と位置付ける。SEGA・講談社が日本側からこの枠組みに加わっていることは、ハリウッド系大手と並んでアジアIPがRobloxを公式マーケティング動線として扱い始めていることを意味する。Starbreeze的な『自社で第2作を発注する』方式と、Netflix的な『箱を解放する』方式が並行しており、業界はもはや両方を検討する段階に入っている。

▲ RobloxのLicense Managerローンチ告知画像。Netflix・Lionsgate・Sega・講談社の4社・7IPからスタートしている。



共通要因:18〜34歳50%増、Incubator、$4.9B収益が変えた経営判断


3つの事例の背後には、共通する数字がある。Roblox公式IRが公表する2025年フル年度実績は、売上49億ドル(前年比+36%)、Bookings 68億ドル(+55%)、クリエイター総収益15億ドル超え。同時に18〜34歳ユーザーが前年比50%超で伸び、ARPUは10代未満より約40%高い。AAA級ゲーム会社が無視できる規模では、もはやない。


制度面の整備も後押ししている。Robloxは2026年3月、GDCでIncubatorとJumpstartプログラムを発表した。Incubatorは経験豊富な開発チーム向けの6ヶ月伴走プログラムで、1コホート最大40チームを採用。RPG・ストラテジー・シューターなど『Robloxで未飽和のジャンル』を狙う作品に絞って支援する設計になっている。Jumpstartは新規参入者向けで、申し込みがロールベースで常時オープンされる。


つまり、Roblox側は『ライセンス窓口(License Manager)』『運営パートナー(Gamefam等の認定スタジオ)』『プロ開発者の伴走(Incubator)』という三層を整えた。ゲーム会社が自社単独でゼロから構えなくとも、IP・運営・技術を組み合わせてRoblox作品を出せる動線が制度として揃っている。Starbreezeのような中規模会社が『2作目を出す』判断を下せたのは、この三層が整ったからだ。

▲ Roblox IncubatorとJumpstartプログラムのキービジュアル。GDC 2026で発表され、プロ向け開発支援が制度として整った。



日本のゲーム会社にとっての示唆——『3つ目のシップ』としてのRoblox


講談社の参加は日本の業界にとって象徴的だ。ブルーロックがLicense Manager公式枠に入ったことで、Roblox上で公式ライセンスを得たブルーロック作品を国内外の開発者が立ち上げられるようになった。Robloxでは既にブルーロック関連の派生作品が累計45億回再生に達しているとされ、Roblox公式が日本IPの世界展開チャネルになる構造ができ始めている。


一方で、日本のゲーム会社・パブリッシャーの動きは欧米・韓国勢に比べてまだ慎重だ。コンソール/モバイルというこれまでの2軸に加え、Robloxを『3つ目のシップ』として扱う発想がまだ社内決裁に乗りにくい。Starbreezeのような中規模スタジオが2作目に踏み込めた一因は、1作目の数字が経営を納得させたことにある。日本勢が同じ判断をするには、まず1作目を持ち、運営データで自社の経営層を説得できる状態を作る必要がある。


実務的なアクションは2つある。第一に、自社IPがLicense Managerに入る価値があるかを判定する初期検討(収益分配15%水準でROIが立つか)。第二に、自社で1作目を持つ場合、GamefamのようなRoblox専門パブリッシャーと組むか、Roblox Incubatorに自社チームで応募するかの戦略選択。どちらを取るにせよ、2026年は『観察する年』ではなく『1作目をどう設計するか』を決める年になっている。

▲ 講談社×Robloxの公式パートナー化を伝えるビジュアル。日本のIPホルダーがLicense Manager側に加わったことを示す。


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