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ブルーロック45億回、転スラも参戦。Robloxが日本アニメIPの世界展開を変えていく

  • 4月12日
  • 読了時間: 6分

2025年7月、Robloxは静かに歴史を変えた。「Licenses Catalog」と名付けられた新しいIPライセンスプラットフォームが立ち上がり、講談社・Netflix・Lionsgate・Segaが創設パートナーとして名を連ねた。それが何を意味するかは、一つの数字が物語る。講談社旗下の人気マンガ「ブルーロック」を題材にした『Blue Lock: Rivals』は、Roblox上で45億回以上再生されている。


この数字は偶然の産物ではない。10代の開発者がアニメ愛から始めたゲームが、月間約7億円の売上をたたき出し、30億円超でスタジオに売却され、そして公式IPライセンスを取得する一連の流れは、Robloxが設計した「IPエコノミー」の構造そのものだ。転生したらスライムだった件(転スラ)も続いて参戦した今、日本のアニメ産業はRoblox上で何を動かそうとしているのか。


10代の開発者が起こした45億回の地殻変動


2024年夏、匿名を希望する19歳のクリエイターが仲間数人と3ヶ月で『Blue Lock: Rivals』を開発した。当初は純粋にアニメへの愛着から作られた非公式ファンゲームだったが、リリース後に同時接続者数100万人を突破し、Roblox内で最も再生されるタイトルの一つに急浮上した。

売上のペースは月間約500万ドル(約7億5,000万円)。2025年3月、Do Big Studiosが300万ドル(約4億5,000万円)超でこのゲームを買収した。10代の開発者にとっては、数ヶ月の開発期間で億単位のリターンを手にした計算になる。Do Big Studiosはこの直後、Roblox史上最高の同時接続者数(2,100万人超)を記録した「Grow a Garden」も傘下に収めており、プラットフォーム上で急速に力をつけている新興スタジオだ。

Blue Lock: Rivalsが示したのは、アニメの世界観と競技ゲームの相性の良さだけではない。ファンが作ったゲームが公式IPより大きな経済圏を生み得るという事実、そして、それをRobloxが「合法化する仕組み」を整えつつあるということだ。

▲ Blue Lock: Rivalsのゲーム内スクリーンショット。5対5のサッカーバトルで、ブルーロックの世界観を実際のRoblox空間に落とし込んでいる



講談社が「創設パートナー」になった日


2025年7月15日、Robloxは「Licenses Catalog」の提供開始を発表した。IP所有者が直接クリエイターにライセンスを提供できるこのプラットフォームは、従来「数ヶ月かかる複雑な交渉」を「数日から数時間」に短縮する仕組みだ。IP側は収益の10〜25%を自動で受け取り、クリエイター側は申請ボタン一つで公式ゲームとして開発できる。


創設パートナーとして名を連ねたのが、Lionsgate・Netflix・Sega、そして講談社。第1弾の日本IPとして「ブルーロック」と「転生したらスライムだった件」が登録された。講談社ゲームラボがXで発表したこの情報は、日本のマンガ・アニメ業界にとって「Robloxを正式なIPチャネルとして認めた」宣言でもあった。

プラットフォームの立ち上げ後、クリエイターから提出されたライセンス申請数は1,500件を超えた。IP所有者はルールをカスタマイズして申請を受け付け、既存のファンゲームに遡及的にIPを付与することも可能になった。Blue Lock: Rivalsがたどった「非公式→買収→公式ライセンス取得」という軌跡は、今後多くのゲームが参照するモデルになるかもしれない。

▲ 2025年7月に公開されたRoblox Licenses Catalogの発表画面。講談社(Kodansha)はNetflix・Lionsgate・Segaとともに創設パートナーとして名を連ねた



Squid Gameが証明した「ファンゲーム合法化」の破壊力


Licenses Catalogのもう一つの注目事例が、Netflixの「Squid Game(イカゲーム)」だ。プラットフォーム開始直後に公開されたSquid Gameライセンスの下、Mr Ducky Studioが開発した『The Squid Game』は160万件以上のお気に入り登録を獲得。同様のSquid Game系ゲーム「Ink Game」も26億回以上の再生数を記録している。

「公式IPがRoblox上に登場する」ことの意味は、単なるコラボ以上に大きい。Robloxの日次アクティブユーザーは2025年時点で1億5,150万人。そのプラットフォーム上に公式ライセンスを持つゲームが登場することは、IPそのものの認知を既存ファン以外の数億人規模のコミュニティに拡大することを意味する。課金行動を持つ13〜25歳のプレイヤー層に対して、ゲームを通じてIPを「体験させる」経路ができたわけだ。

Robloxが掲げるビジョンは「世界のゲームコンテンツ収益の10%をRobloxエコノミーに」というもの。その実現のためにも、IPホルダーとクリエイターが自由につながれる仕組みは不可欠な基盤になる。

▲ Squid Gameの公式ライセンスを取得した「The Squid Game」。160万件以上のお気に入りを獲得し、既存ファンゲームへの遡及的ライセンス付与を実証した



ROBMIX:「Robloxで作って、マンガにする」新サイクル


日本では、Robloxを単なるゲームプラットフォームとして捉えていない企業が動き始めている。電通グループはGeekOut・講談社クリエイターズラボと共同で「ROBMIX」を2025年7月に始動。Roblox上での新IPの創出から、マンガ化・グッズ展開まで一気通貫で手がけるレーベルだ。

ROBMIXが着目するのは、Robloxが「クリエイター育成の場」として機能しているという点だ。日本人クリエイターのmanatoさんが開発した「顔から逃げるゲーム」は、2026年2月時点で累計28億回以上のアクセスを記録している。大手電機メーカーを退職してゲーム開発に転じた氏が語る「無料で世界に公開できる」というRobloxの特徴は、既存のゲーム産業では得られにくい規模の実験環境を提供している。

ROBMIXはこうした次世代クリエイターを発掘し、Roblox上で新しいIPを育てることを目指す。生まれたゲームをマンガ化・メディアミックスする逆引きモデルは、「ゲームからIPを生む」という新しい産業サイクルへの挑戦でもある。Robloxのプラットフォームが1億5千万人以上のDAUを擁する「実証の場」として機能する以上、ここで生まれたIPは最初から世界に公開される。

▲ SegaのIP「Like a Dragon(龍が如く)」を使ったRoblox体験。Licenses Catalogでは日本発のIPも積極的に収録されており、グローバルクリエイターへの扉を開く



転スラが続くとき、日本のIP産業は何が変わるのか


Roblox上でのクリエイター収益は2024年に9億2,300万ドル(前年比25%増)に達し、2025年は10億ドルを超える見込みだ。IP所有者にとって、この収益の一部を受け取れる仕組みが整ったことの意味は大きい。

ブルーロックと転スラが先陣を切った今、他の講談社タイトルや、他出版社・アニメ制作会社のIPが続く可能性は高い。「Attack on Titan(進撃の巨人)」「Fairy Tail」「Naruto」など、Roblox上でファンゲームが存在するIPは無数にある。Licenses Catalogがあれば、そのどれもが一夜にして公式タイトルになれる土台がある。

課題がないわけではない。既存のファンゲームにどこまで遡及適用するか、収益配分の透明性をどう担保するか、未成年クリエイターの権利保護をどう扱うか──Blue Lock: Rivalsの19歳開発者が匿名を希望したように、ゲーム売買は現状、多くがDiscord上の非公式取引で完結する。プラットフォームとして整備が追いついていない部分もあるが、それはこのエコノミーがまだ動き始めたばかりだということでもある。

「ゲームで知って、マンガを読む」「Robloxで遊んで、グッズを買う」という導線ができれば、日本のコンテンツ産業が長年課題とする「IPの海外展開」の入口は、ゲームエンジンではなくRobloxになるかもしれない。

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