アバターで試して、現実で買う。e.l.f.・Fenty・SHIBUYA109が証明したRobloxブランド体験の設計原則
- 5月7日
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▲ Robloxが2026年3月に新設したAvatarメイクアップカテゴリ。e.l.f. Cosmetics がタイトルスポンサーを務め、100以上のアイテムが一斉公開された
「アバターにそのブランドのメイクを使ったことで、現実でそのブランドを検討するようになった」──Robloxとイプソスが共同調査した結果、76%のメイクユーザーがこう回答した。ゲームを遊んでいるうちに購買意欲が生まれる。この現象を設計として意図的に実現しているブランドが、2025年から2026年にかけて相次いで登場している。
e.l.f. Cosmetics、Fenty Beauty、そして日本のSHIBUYA109は、異なる切り口でRobloxのブランド体験を設計した。3社の手法には共通する設計原則があり、それは「参加型・継続型・購買接続型」という3つのキーワードに集約される。本稿では各社の取り組みを具体的な数字とともに検証し、日本ブランドが今すぐ参考にできる視点を導き出す。
e.l.f. Cosmetics:3年かけてエコシステムを耕した美容ブランドの到達点
e.l.f. Cosmeticsは単発のブランドコラボではなく、Robloxを3年以上にわたって継続投資する場として位置づけてきた。金融リテラシーを学べるゲーム「Fortune Island: Earn. Learn. Flex.」、メンタルヘルス教育を目的とした「Love, Your Mind World」、そして2025年12月に投入した「Glow Up」という一連の施策は、いずれも「ゲームとして楽しみながら何かを学ぶ」という体験設計で統一されている。2026年3月にRobloxが新設したアバターメイクアップカテゴリでは、e.l.f.がタイトルスポンサーに選ばれた。100点以上のメイクアイテムが公開されたこのカテゴリは、ゲーム内でブランドを「試着」できる新しい接点として機能している。
その結果として出ているのが、「Robloxユーザーの3人に1人がe.l.f.を称賛している」という数字だ。同ブランドのRoblox担当者Allison McDuffeeは「コミュニティの声を聞き、学び、継続的に進化させることで、ブランドロイヤルティと現実の購買行動の両方に影響を与えられる」とBeautyMatterに語っている。継続することで積み上がるコミュニティの信頼が、単発の広告では得られない購買動機を生み出している。

▲ Robloxで展開されたe.l.f. Cosmetics の体験型ブランドキャンペーン。ゲームと教育を組み合わせた独自設計が、ブランド認知を押し上げた
Fenty Beauty:Shopify連携で「試す」を「買う」に変えた閉じたループ
e.l.f.がコミュニティ積み上げ型なら、Fenty BeautyはRobloxを「購買チャネル」として直接接続した先駆けだ。2025年にRoblox×Shopifyの商取引APIが公開されると、Fenty BeautyはいちはやくGloss Bomb Labという体験を刷新した。ゲーム内でリップグロスの色を試し、気に入ったらそのまま現実の商品を購入できる。「発見→試着→購入」のサイクルをプラットフォーム内で完結させる、業界初の閉じたループだ。
このアプローチが刺さる背景には、Robloxユーザーの消費行動がある。Roblox調査によれば、Gen Zの88%が「デジタルファッションを現実の購入前プレビューとして使っている」と答え、64%は「バーチャルで試着したブランドを現実でも検討した」と回答している。アバターという「もう一人の自分」を使って試すことへの親しみが高いユーザー層に向けて、Fenty Beautyは購買の入口を正確に設けた。インフルエンサーを招いたゲーム内meet&greetも組み合わせ、発見の機会を最大化している。

▲ Fenty BeautyのRoblox体験「Gloss Bomb Lab」。Shopify連携により、ゲーム内で試してそのまま購入できる仕組みを業界で初めて実現した
SHIBUYA109・7-Eleven Japan・Sakura Mall:日本ブランドが踏み出した「常設型」体験
日本でも、Robloxを本格的なブランド体験の場として活用する動きが相次いでいる。SHIBUYA109は2026年3月に「FASHION RUNWAY SHIBUYA109」を公開した。109の館内をイメージした仮想空間でファッション対戦ゲームを楽しめる設計で、ブランドの世界観をゲームとして体験させることに成功している。セブン-イレブンジャパンは2026年のゴールデンウイークに第2弾のRobloxキャンペーンを実施、ギフトカードとRoblox体験を組み合わせる手法は「継続性」という点でe.l.f.の戦略と通底している。
さらに2026年4月にはSmileMeが日本初のバーチャルモール「Sakura Mall」をRoblox上に開設した。企業向けに出店枠を用意するという商業施設型のモデルは、単一ブランドではなくモール全体を目的地にする設計だ。また、Access Partnershipのレポートによれば、日本のRobloxクリエイター数は2022年から2024年の2年間で415%増加し、クリエイター収益の57%は日本国外のプレイヤーから生まれている。Roblox上の日本発コンテンツが、海外ユーザーに自然にリーチできる構造が整いつつある。

▲ SHIBUYA109がRobloxで展開した「FASHION RUNWAY SHIBUYA109」。館内のリアルな体験をゲーム内に再現し、日本の若者世代にブランドを体験させる設計をとった
3事例横断分析:Robloxブランド体験を成功させる設計原則
3社の取り組みを横断すると、5つの設計原則が浮かび上がる。第一に「継続性」。e.l.f.が3年かけて築いたブランド認知や、セブン-イレブンが第2弾を打った事実が示すように、単発施策より継続的な関与がコミュニティとの信頼を育てる。第二に「体験と学びの統合」。純粋な広告よりも、遊びながら何かを得られる体験にユーザーは12分以上滞在する(BeautyMatter調査)。通常のSNS広告と比較して格段に長い接触時間が、購買動機の醸成を支えている。
第三に「アバターを購買インターフェースにする」こと。Fenty Beautyが証明したように、アバターで試着した体験は現実の購買意欲に直結する。76%が購買検討につながったというデータは、Robloxのアバター経済が「ブランドの試着室」として機能していることを示す。第四に「クリエイターとの共創」。Robloxのブランドパートナープログラムを通じて、ブランドがクリエイターの製作するゲーム内に自然に溶け込む形の出稿が増えている。第五に「マルチデバイス設計」。複数のデバイスでプレイするユーザーは、シングルデバイスと比較してプレイ時間が20%長く、消費金額は2.5倍に達する(BeautyMatter調査)。

▲ Access Partnershipが発表した日本Roblox市場レポート。クリエイター数が2年で415%増加するなど、日本のエコシステムは急拡大している
日本ブランドへの示唆:今から動ける3つの起点
日本のブランドにとって、Robloxへの参入は今が「価格の安い時期」だ。2026年5月からブランドの案件登録が義務化されたが、それはむしろ広告品質の底上げを意味し、認知度の高いブランドには追い風となる。参入の起点として具体的に考えられる施策は3つある。まず、既存IPを持つブランドはRoblox License Managerを使ったライセンス供与から始められる。次に、アパレル・美容ブランドであればアバターアイテム(洋服・メイク)の制作・販売が最も参入コストが低い。最後に、電通グループのROBMIXやビーライズ・ゲームガムのような国内パートナーを経由することで、ゲーム制作のノウハウを外部調達できる。
日本のRoblox市場は確実に拡大している。Q4 2025の日本売上(bookings)は前年同期比60%増(Access Partnership)であり、18〜34歳ユーザーの構成比も増加し続けている。アバターで試着した経験が現実の購買につながる経路を設計できるブランドにとって、Robloxはもはや「若者向けの実験的チャンネル」ではなく、購買漏斗に組み込む本格的なメディアとなっている。


