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広告登録が5月4日から義務になった——Robloxの政策刷新が問いかける「ブランド統合」の新常識と日本企業が今考えるべきこと

  • 5月13日
  • 読了時間: 6分

2026年5月4日、Roblox上で行われるブランドとクリエイターのあいだのすべての有償コラボレーションに、プラットフォームへの事前登録が義務付けられた。食品・化粧品・医薬品・金融サービスのカテゴリは13歳未満ユーザーへの訴求が禁止され、リワード形式の広告も同じくU13に届かなくなった。さらにRobloxは、2027年1月から「ブランド統合レベニューシェア」を導入することをすでに予告している。その詳細——つまりRobloxが取る分がいくらなのか——は、Q2 2026中に発表される予定だ。 Robloxに限らず、あらゆるデジタルプラットフォームはスケールするにつれてルールを整備してきた。Robloxは今まさにその転換点にある。7,000人超のブランド戦略家が購読するGEEIQによれば、2025年に仮想世界で行われたブランド活性化の65%がRobloxで実施されており、これは「Robloxはすでにブランドにとってインフラになっている」ことを示す数字だ。インフラである以上、ルールが整備されるのは時間の問題だった。問題は、そのルールが日本のブランドとクリエイターにとって何を意味するかだ。



5月4日から何が変わったのか——新ポリシーの3本柱


Robloxが3月20日にDeveloper Forumで公開した「New Advertising Policies & Standards」には、段階的なロールアウトが明記されている。4月15日のベータツール公開を経て、5月4日から全ブランド統合(Advertising Integration)のAds Managerへの事前登録が義務化された。「事前登録」とは単なる申告ではなく、キャンペーン素材のモデレーション提出が必要で、承認なしにはキャンペーンを開始できない。Robloxは「キャンペーン開始の最低5営業日前には登録を完了することを推奨する」としており、これはブランドとクリエイターの双方にとって従来よりも長いリードタイムを要求する。

年齢別の広告制限も同日施行された。13歳未満ユーザーへのリワード広告(アバターアイテムや開発者製品を報酬として付与する形式)は禁止。食品・化粧品・医薬品・金融サービスを扱うブランドはU13へのリーチを持てない。これはYouTube Kidsや地上波の規制と同水準の対応で、Roblox広告をCOPPA準拠に整備する動きの一環だ。そして2027年1月からはレベニューシェアが始まる。具体的なパーセンテージはまだ公表されていないが、支払額はゲームのトラフィックとエンゲージメントに連動する設計になるとRobloxは説明している。

▲ 2027年からのレベニューシェア導入を報じるNetInfluencer。ブランド統合はこれまで唯一クリエイターが100%を手にできる収益源だった



なぜRobloxはこの変更を選んだのか——「底辺への競争」と呼ばれた価格崩壊


Robloxがこの刷新を「クリエイターのための変更」として位置づけているのは興味深い。実際、今回の変更の原因として挙げているのは「クリエイターが自分のコンテンツの価値を低く見積もらされている現状」だ。Digiday(米メディア)が2025年3月に報じたところによれば、Roblox上のブランドキャンペーン予算は1件あたり40万〜100万ドル超が相場だが、クリエイターはしばしばそれを下回る価格で受けてきた。プラットフォーム横断の比較指標がなく、「他のクリエイターがいくらで受けているか」が見えないために、フラットフィー契約が押し下げ圧力にさらされ続けてきた。

GEEIQは「標準化された測定の導入こそが今回の変更の最大の意義」と分析している。新ポリシーでは、すべてのブランド統合にプラットフォーム共通のCPTV(Cost Per Thousand Views)ベースの計測が導入される。これにより、ブランドはRobloxのキャンペーン実績を他のデジタルチャンネルと同じ指標で比較でき、予算承認のハードルが下がる。GEEIQによれば、仮想世界へのブランド投資が拡大してこなかった最大の障壁の一つが「成果の言語化の難しさ」だった。測定が共通化されれば、その壁が取り除かれ、Robloxがテレビや検索広告と同列に予算計画に組み込まれる可能性が開く。

▲ GEEIQの分析。2025年に仮想世界で行われたブランド活性化の65%がRobloxで実施されており、圧倒的な存在感を示している



クリエイター側の反発——「YouTubeがスポンサー収入を取るようなものだ」


変更を最も強く批判したのは、Robloxのコンテンツエコシステムを支えてきたクリエイター側だ。登録者数1,000万人超を持つRoblox系YouTuberのKreekCraftは、Roblox公式の発表から数時間以内に「これはYouTubeがクリエイターのスポンサー収入を取るようなもの。こんなに反クリエイター・反開発者な施策はない」とX(旧Twitter)に投稿し、「私のビジネスにも直接影響が出る」と明かした。Developer Forumでも複数の開発者が「Robloxはブランドとのマッチングも、交渉も、コンテンツ制作も何もしていないのに分け前だけ取る」と反発した。

より大きな構造的問題として指摘されているのは、Robloxの既存の取り分だ。Roblox上の通常のゲーム内取引では、クリエイターの手元に残るのは約30%で、残りはRobloxが徴収する。ブランド統合はこれまでその外側に置かれており、クリエイターが100%を手にできる数少ない収益源だった。レベニューシェアが導入されれば、その例外が消える。さらに競合のFortniteは、2027年2月まで開発者へのアイテム販売収益100%還元を続けている。Roblox StrategistのJames Purellは「ブランドはRobloxに忠誠心を持っていない、ROIに忠誠心を持っている」とLinkedInに書いた。コスト増と手続きの煩雑化が、ブランド予算を他プラットフォームへ誘導するリスクは現実にある。



日本市場の現在地——120%成長する市場と、先行した企業の実例


Access Partnershipが2025年末に発表した「Robloxと日本のデジタル経済」レポートは、日本市場の成長規模を具体的に示している。2022年第4四半期から2024年第4四半期にかけて、日本のDAU(日次アクティブユーザー)は120%増加した。日本のRobloxゲームのプレイヤーの56%、クリエイター収益の57%が日本国外から来ている。日本ユーザーが年間に感じる「体験価値(消費者余剰)」は1人あたり約18,300円で、国内の日本語コンテンツが英語圏やアジア圏に自然に届く状況が生まれている。

ブランドとしての先行事例として挙げられるのが電通と文化服装学院のコラボレーションだ。Roblox公式がサポートした日本初の「デジタルファッションプログラム」として、学生がRoblox上でデザインしたデジタルファッションを卒業ショーで発表し、リアルの服も制作。Roblox開発者会議(RDC 2025)での展示にも繋がった。このような教育・文化分野の事例に加え、講談社はブルーロックや転スラなどのIPをRobloxで展開し、100万円規模のコンテストも実施している。日本のインフルエンサーの60%がRobloxを「主要な収入源」と回答しており、コンテンツクリエイターのエコシステムとしての成熟も進んでいる。

▲ Access Partnership「Robloxと日本のデジタル経済」レポート(2025年12月)。日本のDAUが2年で120%増加したことを報告



日本ブランドが今すぐ整理すべき3つのこと


2026年中に計画されているRobloxでのブランド活動は、レベニューシェアの影響を直接受けない。2027年1月の導入前に施策を組む場合でも、5月4日以降は登録と素材審査が必要になったことを意識しておく必要がある。特にキャンペーン開始の5営業日前までの登録は、広告代理店や制作会社との連携スケジュールを組む際の新たな制約になる。今後のタイムラインとして、8月には測定・レポート機能がベータ公開され、Q2 2026中にレベニューシェアの具体的な料率が発表される予定だ。

食品・化粧品・医薬品・金融サービスを扱うブランドにとっては、ターゲティングの再設計が必要になる。13歳未満ユーザーへのアプローチができなくなった分、13〜17歳・18歳以上への訴求に注力する設計に切り替えなければならない。一方でこれは、規制が厳しいカテゴリの担当者が「コンプライアンス上の問題を理由にRobloxへの参入を断られていた」状況が変わることも意味する。COPPA準拠が明文化されたことで、法務や規制担当部門への説明が通りやすくなった側面もある。2027年のレベニューシェア料率が出た段階で、ROI計算を再度行ったうえで投資計画を立てることが、現時点での最善策だ。


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