ゲームの中で売れる。RobloxのCommerce APIとブランド広告が示す、次世代マーケティングの現在地
- 4月14日
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Robloxが「広告媒体」から「売り場」へと進化している。2025年5月にCommerce APIが公開され、ゲームの中で商品を試して決済まで完結できる体験が実現した。年間を通じて210社を超えるブランドが参入し、エンタメ・ビューティ・スポーツ・小売と業種の幅は急速に広がっている。日本でもSHIBUYA109がファッション対戦ゲームを立ち上げ、SmileMeがバーチャルモール「Sakura Mall」への企業向け出店受付を開始した。「Robloxはまだ様子見」という段階は、静かに終わりを迎えつつある。
ゲームの中でFenty Beautyが売れた日
2025年5月、Robloxは公式発表を通じてCommerce APIを公開し、Shopifyを初の統合パートナーとして採用した。これにより、クリエイターや企業はRoblox体験の中から物理的な商品の決済まで完結できるようになった。特に注目を集めたのがFenty Beautyの事例で、ゲーム内でのみ販売する限定シェードをリリース。The WeekndはコンサートチケットとデジタルアイテムをセットにしたRoblox限定バンドルを展開した。
ゲーム開発スタジオTwin Atlasは、Commerce APIのベータテスト期間中にCreatures of SonariaやDragon Adventuresなどの人気ゲームへ統合した先行事例として知られる。ゲーム内コマース経由で数週間のうちに6桁ドル(約1,000万円以上)の売上を記録し、受注全体の約90%がゲーム内の統合経由、そのうち半数がリピーターからだったと報告している。Robloxの調査では、Gen Zの50%が「アイテムをバーチャルで試した後、リアルでそのブランドを検討する可能性が高い」と回答しており、「試す」が「買う」に直結する経路が数字として証明された形だ。

▲ RobloxとShopifyの連携によってゲーム内から物理商品を購入できるようになった。クリエイタースタジオTwin Atlasは数週間で6桁ドルの売上を記録している
映画業界が証明した「没入型広告」の破壊力
ミュージカル映画「Wicked: For Good」のRobloxキャンペーンは約80億インプレッション、「Jurassic World Rebirth」は約20億インプレッションを記録した。テレビCMやSNS広告と違う点は、プレイヤーがブランド体験の中で過ごす平均時間が12分に達する点だ。Gen ZとGen Alphaは、RobloxとFortniteを合わせた利用時間がTikTokとYouTubeの合計より39%長い。広告として「流れてくる」のではなく、「選んで入る」形式が高い没入度を生んでいる。
Robloxが2025年から段階的に拡充してきたRewarded Video(報酬型動画広告)は、現在400以上の体験で利用できる。完了率90%超、視認率95%以上という数字は、一般的なデジタル広告と比較しても群を抜いている。Roblox公式発表によると、すでに1,000を超えるブランドがこのフォーマットを活用している。背景には、「広告を見終わったら報酬(ゲーム内アイテム等)がもらえる」という設計がユーザーの離脱を防いでいることがある。米映画産業では前年トップ10作品の7本がRoblox上で活動しており、エンタメ業界にとってRobloxは「プロモーション媒体」の定番になりつつある。

▲ 2025年のRobloxブランド活動を総括した年次レビュー。エンタメ・ビューティ業界が没入型広告で得た成果が数字で整理されている
独自ゲームより「既存ゲームへの統合」が2倍効果的
2025年を振り返ると、Roblox上には210を超えるブランドが常時コンテンツを持ち、年間600回以上のブランド活動が行われた。玩具カテゴリだけで30以上のゲームが存在し、前年比50%増だった。しかしこの数字の中で一つの重要な知見が浮かび上がっている。MediaPostの分析によると、「独自の体験を作るより、すでに人気のゲームに統合する方が効果的」という事実だ。
既存人気ゲームへのブランド統合トップ10は、独立したブランドゲームと比べて約2倍のインプレッションを記録した。NFL Universe Football、FIFA Super Soccer、NBA Championsといったスポーツ系の事例はその典型で、既存のゲームファンに対してブランドが自然な形で接触できる。LEGOやバービー、スポンジボブなど大型IPが絡む場合は独自ゲームでも高いエンゲージメントが得られるが、そうでない多くのブランドには「既存ゲームへの参加」の方がROIが出やすい。H&R Blockは2025年のキャンペーンで、人気ゲームへの有料メディア統合と没入型体験を組み合わせ、「ゲーム内収益と税金の関係」というテーマを若年層に届けることに成功している。

▲ SHIBUYA109のRoblox体験「SHIBUYA109 FASHION RUNWAY」のゲーム内スクリーンショット。ファッション対戦という形式でブランドをゲームの中に落とし込んだ
日本ブランドの先行事例:SHIBUYA109とSakura Mallが示す選択肢
日本でもRobloxを活用するブランドが増えている。2026年3月、SHIBUYA109はRoblox上でファッション対戦ゲームを公開した。プレイヤーが与えられたテーマに合わせてコーディネートを競う形式で、若年層を中心としたSHIBUYA109のブランドイメージをゲームの文脈に落とし込んだ事例だ。同ブランドのターゲット層とRobloxの主要ユーザー層が重なる点で、媒体選択としての合理性がある。
同時期、SmileMeは「Sakura Mall」という日本初のバーチャルモールをRoblox上に立ち上げ、企業向けの出店受付を開始した。仮想空間の中にショッピングモールという場を作り、複数ブランドが集まれるプラットフォームを設計するアプローチは、Commerce APIとの親和性も高い。また、ビーライズとゲームガムがRobloxのIPメタバース事業で業務提携を発表するなど、支援会社側の整備も進んでいる。海外ブランドの大型参入事例を踏まえると、日本ブランドが独自ゲームより「既存ゲームへの統合」や「モール上のテナント出店」という形式から始めるのは合理的な選択になる。

▲ SmileMeがRoblox上に開設した日本初のバーチャルモール「Sakura Mall」。複数ブランドがテナント出店できる設計で企業向けの受付を開始した
2026年、Robloxが変える「ブランドとユーザーの接点」
2026年1月のCES発表では、Robloxが広告インフラをさらに拡張した。目玉の一つが「Homepage Feature」で、1日1.51億人が最初に目にするRobloxホーム画面にブランドを掲載できるCPMベースのフォーマットだ。動画クリエイティブがそのまま3Dの没入空間に変換されるため、開発コストをかけずに体験型広告として機能する。e.l.f. Beauty、Sam's Club、ユニバーサル・ピクチャーズ「Five Nights at Freddy's 2」が先行してクローズドベータに参加している。プログラマティック広告の連携先もAmazon DSP、Index Exchange、Magnite、Pubmaticへと広がり、既存の広告配信インフラとの接続が容易になった。
Robloxの方向性はシンプルで、「試す→買う→広める」という循環をゲームの中で完結させることだ。日本ブランドにとっては、Roblox上での体験設計を「認知」だけでなく「購買」まで設計し直す好機が来ている。若年層が最も長い時間を過ごすプラットフォームで、コマースの起点を作れるかどうか。その差が、3〜5年後の顧客基盤の厚みに直結する。今すぐ独自ゲームを開発する必要はなく、まずは既存の人気体験への広告統合か、Sakura Mallのようなプラットフォームへの参加から始められる選択肢が日本にも出てきた。


